WESSRUN! RUN! RUN! スペシャルインタビューthe pillows

RUN! RUN! RUN! スペシャルインタビュー

PICKUP ARTIST

the pillows

3月8日にアルバム『NOOK IN THE BRAIN』を発表したthe pillows。

21作目にしてこの大作。濃密な10曲だ。エネルギーはさらに加速している。特にそれを感じるのは、音色とフレーズを巧みに操りダイナミズムと繊細さをバランスよく表現する2本のギター・アレンジだ。

まぁ、ファンからしてみたら今さらではあるよね。でもこのアルバムからthe pillowsに出会うTEENAGER達の、驚きや歓び、そして『見つけた感』を想像するとさ、ナンカ嬉しくなっちゃうだろ?  

昨年のリオ・オリンピックで逆転金メダルを獲得した女子レスリングの登坂絵莉選手のために書き下ろした『BE WILD』も収録されている。

個人的には“身を焦がして燃え盛る 松明を放せない”と歌うM-8の『pulse』が大好きだが、それは名曲『About A Rock’n’Roll Band』にも似て、10代の多感な時期に洗礼を受けた音楽への情熱に胸焦がしながら、まだ到達できないもっともっと先にある何かへ手を差し伸ばし続ける、その姿勢こそがロックンロールの『純』であると伝わるからだ。  

アメリカで2017年冬以降に放送が決定しているアニメ『フリクリ』続編の音楽を前作に続き担当することも決定し、2000年に『Ride on shooting star』を始めとしたthe pillows独自のオルタナ・サウンドで全米を驚かせた快進撃が再現される日も近いと想像すると更にワクワク感が加速する。

4月にはUNISON SQUARE GARDENとのライブが、そして7月には旭川と札幌でのワンマンライブが控えている。 山中さわおに話を聞いた。

the pillows

INTERVIEW

・女子レスリングの登坂絵莉選手のために書き下ろした『BE WILD』も収録されましたが、そもそもさわおさんはスポーツは?

「登坂選手の試合はもちろん生中継を見たし感動もしたんだけど、基本スポーツはやらないし見ないですね。コンプレックスがあるんです。最近の人はスポーツもできるしオシャレでもあるし、そしてモテるでしょ?そんなイイトコ取りは止めてくれよ!って思いますね(笑)」

 

・(笑)

「勝ち負けがあるじゃないですか、スポーツには。音楽には勝ち負けはないから。世界一の称号を取りに行くという精神力は、ただ単に『すごいな〜!』と感嘆するしかないですよね。そこへ行くための長い日々があるじゃないですか。そういう話しを聞くと特に『すごいな〜!』って思いますよね。そのストイックさに驚愕ですよ。彼女たちから見たら僕らミュージシャンなんてダメ人間ですからね。ストイックさなんて全くないしさ(笑)」

 

・でも、さわおさんは寄り道をせずに28年間音楽一筋でやってきた。その強い精神力って一流のアスリートとも共通しているように思います。その精神力というか、ある種のストイックさはどう形成されてきたのでしょう?

「僕は子供の頃から、なにかある度に、ひとつひとつ『それは自分にとって必要な事か?不必要なのか?』って考えてから行動する子供でした。例えばクリスマス、例えば初詣、例えばバレンタイン、その時その時の自分にとって必要かと。『みんながやるから、、、』と流れに乗ってしまうことは避けて来たつもりです。いっこいっこ考えて自分で判断する子供でした。そういう習慣が身に付いていたと思います。

みんなが大学に進む。何で?と考える。『だってみんなが行くから』。そんな流れにのるような選択肢は僕にはないんです。自分には進学する理由がないと思ったから大学には進まなかった。

例えば、『この歳になったら結婚とか子供を持つ』って考えることもそうです。周りのみんなが結婚し始めたから焦るとかいうのは全くないし、子供を持つ年齢でしょ?と言われても、その時の自分には必要ないと思えば、それに乗っかかろうとは思わない。自分で真剣に考えて行動したい、そんな考え方を小さい頃からやってきたように思います」

 

・子供の頃に思い描いていた未来に今は近い?

「そうですね、、、それはそう思います。納得しています、今の人生に。全部が思い通りには行ってないですけど、でも納得はしています。自分のキャラクターや性格や、人とのコミュニケーションの取り方とか、そういうものを考えると、うまく頑張ったんじゃないかなぁ(笑)。嫌われるような発言や行動もとったりしてるので、その割にはまぁ(笑)、僕に愛情を注いでくれる人といっぱい出会えたのでね」

 

・話は変わりますが、THE COLLECTORSの武道館はどうでした?

「いいライブでしたよ、コレクターズ。しばらくは『チケットが売れない、満員御礼にならない』って言って、悩んでばかりいた時期もあったみたいだけど、(注:当RUN! RUN! RUN!の、THE COLLECTORS古市コータローさんのインタビューをご参照ください!)どっかで吹っ切れたんですかね。売り切れにならなくたってこれまでの30年の中で一番お客さんが集まるライブになる事は間違いない、来ないお客さんのことを考えてもしょうがないんだから、今チケットを買ってくれ楽しみにしているお客さんを楽しませるようにしよう、って切り替えたんじゃないですかね。照明もすごく派手でエンターテイメント性にも溢れたいいライブでしたよ。

2度目のアンコールがマーサ&ヴァンデラスの『恋はヒートウェーブ』という、ロンドンのモッズ達に愛されたモータウン・ナンバーの日本語のカバーで、30周年にカバーで終わるって、それもコレクターズらしくて良かったな。The WhoやThe Jamもカバーしてる曲ですね。新曲とか演るんだろうな、って思ってたらソレを演ったんで『オッ!』となりましたね」

 

・Theピーズも応援してますね。

「応援というか、、、だってTheピーズはウチのシンイチロウがいるバンドですから。ウチのドラマーがやっているもう一つのバンドが、僕らのツアー中に武道館をやる訳ですから(笑)。Theピーズって特殊なバンドで、ラジオやテレビでかけられない歌詞を持った名曲をいっぱい持っているし、そもそもプロモーションとか全然やらないバンドだし、あとはマネージャーとも僕は仲がいいんで、そういう意味で応援というか、気にはなりますよね。成功してほしいなって思いますし、そのお祭りには乗りたいですし。応援、応援ってあんまり後輩は言っちゃだめなんじゃないの?って気はありますよ。先輩達の成功を信じて願っていればいいんじゃないか、って気持ちですかね」

 

・ところでアルバムですが、何年かに一回動物とか骨をモチーフにしたジャケットになりますが、その意図って?

「ジャケットには細かく指示を出します。指示というより、僕の頭の中にあるものを具現化してもらうといった感じですね。動物や骨かぁ、こうジャケットを並べてみると確かにそうだけど、それを意識したことはないですね。その時のインスピレーションで好きなものを挙げていったら、あぁそうだったんだ、って感じですね。

今回のジャケットで言えば、もちろんこういう光景ってあり得ないですよね?鯨の骨の写真があって、そこに景色と、孔雀の羽、という内容やレイアウトはデザイナーに話しました。浜で朽ちてそのまま残った鯨の骨ですね。骨とか朽ちて残ったモノに対する感情ですか?うーん、、、いやぁ特にはないと思いますね。アルバム『MY FOOT』が骨だったことを今思い出したくらいです(笑)。何個もアイデアを出して具体化してもらって、その中から、この少年のイラストとの雰囲気も良かったし、これに決めたんです」

 

・『フリクリ』の続編への依頼は光栄ですか?また一緒にやりたいと白羽の矢がたったのは。

「そうだと受け止めています」

 

・『フリクリ』シリーズの生みの親である鶴巻和也氏を筆頭に、総監督は本広克行氏(映画 踊る大捜査線ほか)、キャラクター原案は貞本義行氏(新世紀エヴァンゲリオン)など、すごい才能の方と一緒に作る作業というのは、いつもの手法とはちがうものですか?

「いや、そうでもないですね。ほとんど同じです。もう作って提出しました。 前回の2000年の時は、いくつかの要望はあったんですが、それとは違う『Ride on shooting star』を主題歌として提出したんですね。リクエストとは別物だったけどそれが受け入れられて使われました。僕も実際フリクリを見て、映像から流れる『Ride on shooting star』を聴いて、the pillowsの世界観にも合っているなと感じていたんで、あれが正解だったと判断するならば次はこうだな、というのがあったので、それを出しました。前作から16年経って、この間に才能ある若手がたくさん出てきたのに、再びthe pillowsに話が来たのだから、僕ららしい、僕らしかやってないことをやった方が面白いかなぁと思って。音楽ジャンル的には、オルタナと言ってもいろいろあるんですけど、the pillows以外日本で演っているのはいないな、って曲を作りました」

 

・今回のアルバム『NOOK IN THE BRAIN』もオルタナの感じがありますが、それにひきずられた訳ではない、と?

「後から思ったら、そうかな?というのはありました。ただ、このアルバムを作る時、『Ride on shooting star』とか久々に音源を聴いたりしていたから、90年代後期のオルタナの気分を取り込んで曲を作っていたのかもな〜、って後になって気が付いた。去年のツアー中にホテルでこれらの曲を作っていたんですけど、曲を作る時は酔っぱらっているので(笑)、いちいち自己分析なんてしないんですよね。曲の形を整えて、纏め上げて、こうしてリリースして、その間にこうしたインタビューを受けて、そこでいろいろ自己分析をしたり、そこでいろんな評価の言葉をもらう中で、『あ〜、そうだったのかもな』って後から気付くわけですよ」

 

・今年の冬くらいからアメリカで放送が始まったら、また久しぶりにUSツアーをやろうという計画はないんですか?

「まだ具体的では全然ないんですけど、やれるならやりたいですよね。活動休止とか周年ライブとかがあって、しばらく期間が空いちゃったんですけど、せっかくのいいタイミングなので、やりたいという気持ちはあります。でも、周りのみんなもそう考えるらしくて、会う人会う人、後輩バンドみんなに『連れてってください!』って言われるんですよぉ(笑)。コイツらと回ったら楽しいだろうな、って言うのはあるけど、経費とかいろいろあるじゃないですか(笑)。レーベルの主宰としてはやっぱりそういうことも考えなきゃいけないわけでね、さてどうなりますか、って感じですよね」

 

・アルバムに英語詞の曲が3曲あるんで、アメリカとかアメリカツアーというものを意識しているのかなと思いました。

「いや、アメリカで歌うなら日本語歌詞の方がいいと思います。僕の英語じゃ違和感があると思うし、僕の英語のクオリティじゃちゃんと伝わらないんじゃないかと思うし(笑)。それに、USツアーをやったら来てくれるお客さんっていうのはジャパン・カルチャーに興味を持っている人達ばっかりなんですよ。だから日本語でやった方がいいと思います」

 

・4月にはUNISON SQUARE GARDENとのライブ『fun time HOLIDAY 6』が控えてますが、ユニゾンとは?

「一緒にやるのは3回目です。博多で1回、東京で今年1回やってます」

 

・じゃあ良い関係なんですね。

「田渕(田渕智也 Ba.)がthe pillowsを好き過ぎる。好き!好き!がすごいので、普通に可愛い(笑)。こうすけくん(斎藤宏介 Vo.)も可愛い。タカオ(鈴木貴雄 Dr.)はフツー(笑)。面白いヤツだけど可愛いとは思ってない(笑)」

 

・(笑)。The pillowsが好き、ってバンドは多いと思うし、フェスとかで会えばいろいろ話もするでしょうけど、ライブに呼んだり呼ばれたりを決めるジャッジポイントってなんですか?

「うーん、朝まで酒を付き合ってくれる若手は好きかな〜(笑)。最近の若手はあんまり酒を飲まなくなっているのか、終わったら『お疲れさまでしたぁ』って帰っちゃうのもいるけど、出来れば一緒に飲みたいよね」

 

・5月からはツアーが始まります。7月の旭川と札幌に向けて。

「旭川は27年ぶりなんですよ。27年前にファーストツアーで行ったんですけど、人気がなさ過ぎて、心折れてね(笑)。万が一今度も人気がなさ過ぎたらまた行かなくなるので、どうか旭川にみなさん来てください!」

 

・(笑)そんなにやってないんですね。

「当時はカジノドライブじゃないですよ、スタジオナインとか言ったかなぁ?そんなライブハウスありました?」

 

・駅前の西武デパートにありました!『スタジオ9』で合っています。すごい記憶力だ!

「シンイチロウが東京からビーチサンダルで来て、そしたら雪が降って『ざまーみろ』って思った記憶があります(笑)」

 

            インタビュー・文 大槻正志(ペニーレーン24)

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