WESSRUN! RUN! RUN! スペシャルインタビューa flood of circle

RUN! RUN! RUN! スペシャルインタビュー

PICKUP ARTIST

a flood of circle

ロックンロールとブルース、というオールドスクール・ロックを大事にしてきたバンドの持ち味を変えずに、表現の間口を大きく拡げているのが1月18日に発売されたニューアルバム『NEW TRIBE』だ。その背中を押したのが本文でも多く語られているロンドンのメトロポリス・スタジオのエンジニアXavier Stephenson氏(通称ザブ)。サイコーの味方を得て尖端と懐古が同居し、フロントマン佐々木亮介は『Rock’N’Roll New School』(M-6)と高らかに歌うのだろう。生々しい感情と共に躍動するメロディによって、我々はロックンロールの凄さを久々に我が身体に取り戻す事になるだろう。佐々木が描き、かき鳴らすロックンロールはいつだって【最強の答え】であり続ける。このバンド、10年を経て遅まきながらもいよいよ佳境に入ってきた。理想に限りなく近づいている。そのトバ口を佐々木に聞く。

a flood of circle

04.13(木) 旭川CASINO DRIVE
OPEN 18:30 / START 19:00

04.14(金) ベッシーホール

OPEN 18:30 / START 19:00

04.16(日) 函館club COCOA

OPEN 17:30 / START 18:00
オールスタンディング ¥3,500(税込)

公演終了

INTERVIEW

・アルバムを聴かせていただいて真っ先に思い浮かんだのは『Reborn』という言葉でした。11年目にしての再生というか、力強いしとても開かれたアルバムですね。

「リボーンですか、うん、アリですね」

 

・こういうアルバムになるだろうというのは作り始めたときから確信していたんですか?昨年の9月のシングル『BLUE』から始まっているのかな?

「一昨年の秋に出したシングルの『花』から始まっていると思います。自分たちで事務所を立ち上げたりとかもあって苦しいシーズンだったので、その年だけでギタリストが3人も変わっているし、なかなか落ち着けないなというフラストレーションや苦しさを、その『花』って曲で吐き出せた感じがあって、それで10周年となる2016年には、もうロンドンに行っちゃおう!みたいなぶっ飛び企画が出てきて、もっと楽しもう、もっとチャレンジをしようというところに意識が行き、もっとビッグなメロディやサウンドのものを出したいというのがあったので、ロンドンのメトロポリス・スタジオに行く事にしたんです。アビーロードとか他にも使いたいスタジオの候補はあったんですけど、歴史もあって、かつ最先端の音も作っているスタジオだったので、ここに決めました。最初に入った部屋は『ここでクイーンがボヘミアン・ラプソディを録ったんだよ』とか、俺が歌入れをしたブースはミック・ジャガーが録ったところだったとか、歴史もあるんです。昨年の紅白歌合戦で宇多田ヒカルさんが歌ったスタジオもここだったそうですよ。僕らを担当してくれたエンジニアはXavier Stephensonさん、通称ザブという人で、彼は日本人だと、葉加瀬太郎さんや松任谷由実さんのRec.もやった人で、音の空間を広く作る人で、僕らが新たに求めている音と合致していたんです」

 

・昨年2月のRec.は『Flyer’s Waltz』、『BLUE』、『El Dorado』の3曲だったんですよね?

「そうです。その3曲はキャラクターが全部異なる3曲で、自分の持っている音楽の幅を出し切った曲だった。アレンジのアイデアもかなり固めてスタジオに入ったんですけど、ザブが多くのアイデアをくれて『せっかくロンドンまで来てやっているんだからアイデアを受け止めていろいろやってみよう』と演ってみたら、けっこういろいろ扉が開いた、というか。三日間で3曲録ったんですよ(笑)。ザブは一切手を抜く事もなく朝まで付き合ってくれて。目の下にクマを作ってまでやってくれました。情熱を傾けてくれたし、人間的にもハモったので、そりゃあ、大好きにもなりますよね。その感触がすごく良かったので『アルバムもザブと一緒にやりたい』とオファーしてみたんです。スケジュールや予算の面で一度はメトロポリスには断られたんですけど、ザブが『日本に行きたい!a flood of circleが呼んでくれているなら、俺は日本に行く!』と言ってくれて実現したんです。結果8月から丸まる一ヶ月日本に来てくれて」

 

・フリーランスのエンジニアさんだったら話も分かるけど、スタジオに所属している人が出張するなんて聞いたことがないもんね。普通なら、またロンドンに来い、って話だもんねぇ。

「前例のないのをザブが打ち破ってくれました(笑)」

 

・日本で録音した『モウリ・アートワーク・スタジオ』はザブさんは気に入ってくれたの?

「そうですね、モウリ・アートワーク・スタジオはスタッフの雰囲気も含めて気に入ってくれました。で、来日するにあたって一つだけ要望があって、録音をしたモウリ・アートワーク・スタジオとミックスは別のDede Airというスタジオも使いました。ミックス作業をするのにこういう機材が欲しいというのがあって、それがザブのサウンド作りのキモなのかなぁ、Dede Airはそれがあるスタジオでした。でもそれってけっこう古いタイプの機材だったんです」

 

・よく聞く話だけど、最先端の機材って断然日本の方が揃っている、とか。

「そうそう、そうなんですよ。機材は東京の方がすごいものが揃っているんです。ザブも日本に来て、こんなに大きな楽器屋があるんだぁ!と写真を撮っていたのが、僕らが普通に目にする街の楽器屋でね(笑)。ザブはリアーナとかデイビット・ゲッタやブレット・フォー・マイ・バレンタインとかもやっている人だけど、じゃあなんでロンドンではあんなすごいミュージシャンが育ち、エンジニア達が最先端の音を作れるのかといったら、思うんですけど、逆にモノがあんまりないから、なのかな?って。ないから工夫するのかな?って。必要は発明の母というか。あり過ぎると甘えちゃうのかな?って。ミュージシャンと同じようにギリギリまで【いい音】にこだわって作業するんですよ。ピュアな気持ちで作業してくれましたね、ザブは」

 

・ふむふむ。

「さっきRebornと言ってくれましたけど、俺等は10年間いろいろ経験してきて、事務所も作ったりして、前より大人な気分でいたんですけど、もっと子供だったときの様にピュアに良い音を求めてやっていけばイイんだな、変にハスに構えたりしないで、純粋にのめり込む気持ちでイイんだなと、暗に言ってもらえたような、これまでを肯定してくれたように思っています」

 

・聴いてみて、このアルバムではドラムとベースの音のブ厚さが印象的でした。

「ザブのミキシングのひとつの特徴として、絶対ちょっと変なコトをするんですよ。異常にベースがデカかったりとか異常にスネアがデカかったりとか。M-5の『ジュテームアデューベルジャンブルース』という曲のスネアなんか、音はデカいし変な音だしすごい違和感があったんですよ。『やり過ぎだよな』って一瞬思ったんですけど、ザブの狙いがだんだん分かってきて、『ここまでいっぱいロックの歴史があって、良いミックスというのもたくさん存在しているから、それをトレースした良い音というのは目指してない。今までになかったことをやろう』というのがあるんです。だからどのミックスにもちょっと変わったフックがあって、【今までの常識でいうとちょっと変】ってことをやろうとしているんですよ。【1回聴くと『なんか違和感』、何回か聴くと『カッコイイ』ってこと】をやろうとしているんです。発想が面白い。【ちょっとでも何か新しい事をやる】、そのことの積み重ねで新しい扉を開いてきたんだなぁ、と思う。決してサボらない。【一回良い仕事をしてもそれを次のフォーマットにしない】んです。そこがすごい」

 

・こういう纏めが良いかどうか分からないですけど、そういうザブさんの力も借りてa flood of circleの新しい領域が拓いた、と。血がたぎる熱を手に入れた、と。そもそもさ、『NEW TRIBE』のトライブって、部族とか群れとかっていう意味じゃない?新しいチームみたいなニュアンスで付けたタイトルですか?

「まぁそうですね。歌詞とかかっている部分で言えば『生まれ変わるのさ/今日ここで変わるのさ』と連動しています。だから一番最初に言ってくれたRebornというのが、まさにズバリです」

 

・なるほど。僕の感想も間違ってはいなかったと(笑)。で、さっきシングルの『花』からこのアルバムは始まったと言ったじゃないですか。その『花』の歌詞の中に『ただの死んだ木』というフレーズがあって、で、歌詞カードの中でも使われている今回のアー写は倒木の前に立つメンバー3人で、倒木っていうのはつまり死んだ木で、つまりキチンとイメージが連動しているんだな、と思いました。

「すごーい!すごく良い解釈(笑)。そういうことなんです、実は。(小声で)次のラジオからそう話そうっと」

 

・おいおい(笑)。サウンドにものすごい勢いがあるけれど、決して荒々しくはなく、むしろ丁寧ですよね。生々しいのに雑ではない。それはつまりいかにこのバンドとザブさんの相性が良かったかという証左ですよね。

「ありがとうございます。ロックンロールとかブルースという、とても長い歴史のある音楽を、伝統芸能ではなく、【新しい音楽として更新する】という僕らのテーマを形に残してもらえました。去年一年はずーっとハードルを上げ続けてきたけど楽しかったし、今年は、もう一回鍛え上げられるな、って感じがしてて、まだここの筋肉を使ってなかったという筋肉がいっぱい見つかって、もっとイケルなってすごく感じていて、バンドも固まっているし、ベクトルは上を向いていますよね」

 

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・話は変わりますけど、アルバムのジャケットの一番後ろのページにはいろんなクレジットが載っていますけど、ここにTOUR STAFFの名前やLIVE CREWの名前が載っているのって珍しいことだしイイナァって思って見ていました。ライブスタッフを大事にしている、つまりはライブを大事にしているa flood of circleらしくてホント良いです。

「他の方はあまり載せていないんですか?アルバムとライブは連動しているものだし、マネージャーがちゃんと載せてくれているんでしょうね。そういう意味でもチームとして上を向いたベクトルを共有出来ているんでしょうね」

 

・佐々木さんにとって『いい曲が出来たなぁ』って思う瞬間ってどのタイミングなんですか?

「あー、うーん、曲によって違うっちゃ違うんですけど、共通していることでいえば、歌詞も書いているので、大事な一行、これはどの曲にもあるんですけど、その一行が書けたら『あぁ出来たな』って思いますね」

 

・今年11年目ですけど、なかなか波瀾万丈な11年、飽きる事のない11年、、、

「ははは、マンネリになりたくてもなれなかった11年、緊張感のある11年(笑)」

 

・(笑)、その中ではいろいろ【変化】もあったことと思いますが、変わるべき事、変わってはいけない事、を今どう考えますか?

「今唐突に頭に浮かんだのは永六輔さんでしたね」

 

・えっ?なんで?

「変わるべき事と変わっちゃいけない事がある、ということをよく話していた方だったので」

 

・へえ、そうでしたっけ。

「変なプライドやアイデンティティはむしろ無い方がいいと思ってて。そんな立派なモンじゃないんじゃないかって思ってて。自分はコレだ!って言いたいし、言った方が楽なんですけど、それに抗ってチャレンジした方が面白いものが出来るんじゃないかと。【変わらずに変わり続ける】ってことなんじゃないか、と」

 

・でも、このアルバムこそ世に問いたいでしょ?

「これが伝わんなきゃ、マジ嘘だろ?って思ってますよ!」

 

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・ライブの話にしましょう。3月から始まるツアー『NEW TRIVE-新・民族大移動-』は27ヶ所28本となかなか長いツアーですね。

「以前に47都道府県ツアーをやっているので、それほど長いわけでもないですけど、近年のうちでは長いですね。北海道3ヶ所も久しぶりで、函館は初めて行きます。このアルバムの曲は出し惜しみしません。去年秋から一般公募でアオキテツという24歳の若いサポートギターを入れたんですけど、それもいい出会いで、バンドの調子もすごくイイんです。テツは『骨を埋める覚悟で来ました!』と言うし、このままこの4人でライブを続けて行けたらいいんですけど。最初の頃は『まだ若いしサポートだし僕らが引っ張っていかなきゃ』と思っていたんですけど、テツはa flood of circleに愛情を持っているし、強い情熱を持っているので、今はお互いに引っ張り合っている感じですね。ナベちゃん(Dr.)もHISAYO姐さん(Ba.)もすごく燃えてるし、時にぶつかり合ったりもするし、それってバンドにとってはイイことなんですよね。そういう活力のある状態なんでそれを確かめにライブに来て欲しいですね」

 

・話が前後しちゃうけど、このアルバムの曲って、聴かせたい人の像が明確なような気がします。万人に向けて、というより、曲によってですが聴かせたい人の輪郭が見えるような。だから『あっ、この曲はワタシの歌だ』と感じる人が多いんじゃないかなぁ。その分【刺さる歌】だと思います。

「歌詞全部じゃないけど、一行その言葉を書ければ曲に背骨が通る感じがするんですよね。曲が強くなるんです。曲を作る時にそのイメージがハッキリしていると、逆にみんなに届く曲になるんですよね。そういうのがこのアルバムには多いと思います。ちなみにラスト12曲目の『Honey Moon Song』というのは、北海道に住んでいる人がモチーフになっていて、だからこの夜のフィーリングは冬の札幌の晴れているきれいな夜空のイメージで描いているんです」

 

・いや、最後にこんなタイトルの曲が入っているから、結婚したのかな?と思っていました。でも触れちゃいけないような気がして聞かなかったけど(笑)。

「それ、よく言われますが違います(笑)。ある病と闘っている方が北海道にいて、僕らの曲を好きでいてくれて、努力して腕が動かせるようになったらお手紙を書いてくださって、そしたら数年後に今度は絵を描いてくださって。それって、月に行く事よりも大変なことだと思ったんです。その方の手紙や絵は、その日々の努力は、僕らの背中を押し続けてくれているし、『いつかはライブに行けるようになるのが夢です。だからリハビリ頑張ります』とも言ってくれていて、だからその日が来るまで僕らはバンドを止めちゃいけないんです」

 

            インタビュー・文 大槻正志(ペニーレーン24)

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