・このアルバムにも2曲『美しい悪夢』と『夏の砂漠』が収録されていますが、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんがプロデュースした作品は結成12年のAFOCにどんな影響を与えたのですか?
「一番大きなのは田淵さんが“僕はフラッドが好きだ!”というポジションで参加してくれたということですね。とてもピュアな角度で入ってくれて接してくれたんです。チケットを買ってライブに来てくれたりするし、CDも買って聴いてくれてるんですよ。だから、ファンという言葉に嘘偽りがなさ過ぎて、例えば新しい要素を取り入れようと相談したりすると”それもいいけどココがフラッドの良いとこだから“と意見を言ってくれたり具体的に音で示してくれたり。今回のアルバムは、バンドらしさ、バンドのメンバーがキラキラ輝く音にしたい、と思っていたんですけど、改めて田淵さんに気づかされた部分もあると思います。田淵さんと僕との共通にあるROCKは『the pillows』と『ヒロト&マーシー』くらいなんですけど、UNISON SQUARE GARDENのドラムもベースもギターもガンガン鳴り響くけれど、メロディはポップでシンプルみたいなものは僕も大好きなので、日本語のロックならではのポップさを僕も求めていたしそれを与えてくれたとも思っています」
・テレビアニメ『群青のマグメル』のエンディング主題歌『The Key』も4月にリリースされます。アルバムには入れなかったんですね。
「アニメの主題歌なのに最初の20秒くらいは弾き語りなんですよ(笑)。アニメソングっぽくなくて、かなり僕らっぽい。というのは、いろいろ制約とかリクエストがあるんだろうなと早めに録り始めたんですけど、ほとんど何も言われることもなくて、自由にやらせてもらいました。でもアルバムができた後に改めて聴いてみると、“アルバムのその後のストーリー”みたいな感じなんです。『ハロー!ニューワールド』と歌っていますが、このアルバムを作り終えて見えてくる新しい世界、とも聴こえると思います。それとこのシングルには、アルバムの4曲目の『Backstreet Runners』の続編としての『Backstreet RunnersⅡ』も入っているので、アルバムとの連動性はなおさらありますね」
・Backstreet RunnerではなくてBackstreet Runnersと、sが付いた複数形なんですよね。この前に収録されている3曲目の『光の道』には「けもの道」という言葉が使われていて、この4曲目では「走る荊の道 大外の大外」と歌われていて、この世界観は佐々木さんならではと思うんです。そしてこの2曲が並んだということにも意味があるのだと思うんです。そして複数形としてのs。
「なるほどぉ。確かに今までsを付けている曲は少ないかもしれないですね」
・新しい仲間を迎え入れたことの複数形なのか、、、?
「それも無意識にあるかもしれないですね。sを付けるのってバンド名っぽさもあるじゃないですか。だからそのイメージもあったと思うし。メンバーとかスタッフとか目の前にいるファンも含めての『仲間』に対してsを付けている感覚もあるし、もっと、まだ出会ってないけど「このままじゃダメだ」と思ってどこかを走っている人がいるかもしれない、そんな【まだ見ぬ仲間】にも言っているかもしれないですね」
・でも新たにテツさんがギターで入って、佐々木さんとはまた違うテイストの音色が入って、その面白さは格段に増しましたよね。バンドが変化を楽しんでいる感じはアルバム全体から溢れているように思います。
「ライブでのサポートで2年半一緒に演ってきてますが、僕とテツの関係性はまだいい意味で固まってなくて、テツがどんな球を投げてくるかレコーディング中は楽しみだった。テツの出してくる音に?を感じたら今まではサポートだから「違う」って言えたけど、今は「俺はこう思ってるんだけど」って言うし、言えるし、話し合える。そうするとA案でもB案でもなく新しいC案が出てくることもある。それがすごく楽しみでしたね」
・今は穏やかにこう話しているけどさ、HISAYOさんのtwitterに「ぶつかって、喧嘩して、すごくいいアルバムができました」みたいなことが書いってあって(笑)、そういう喧嘩っぽいこともあったんですか?
「僕とテツには全くなくて、それはホントなくて、あったとしたら僕とナベちゃんですね(笑)。それは腐れ縁で、二人で言い合っているのをテツとHISAYO姐さんが「早く終わんないかなぁ、、、」と聞いている、みたいな(笑)」
・テツさんはそうでしょうけどHISAYO姐さんは仲介に来たりしないの?
「姐さんは「もっとやれ!」と火に油を注ぐ係ですから(笑)!姐さんとは一緒に飲みに行ってすごく長い時間ガッツリと話し込んだりはよくしますけど、喧嘩したことは全然ないんですよね。ナベちゃんとのぶつかり合いは、すごく面倒臭いんですけど、それが【AFOCの肝】だと思いますね」
・初回盤には3曲の『サテツCD』が付いています。新曲なんですね。
「自分でも曲は書いているんです、とテツは元々言っていたんですよ。「昨日は歌詞を書きました」って言うから見ようとすると隠すんですよ(笑)。なんだよぉ、小学生のポエムか!って話ですよね(笑)。まぁ、年下だし後から入ってきているしAFOCの名の下としては出しにくいのかな?と思って、じゃあまずは二人で『サテツ』として、しかも特典という形で作るならテツもやりやすいのかな?と思って作り始めたんです。でも初の作業だからとっ散らかってもダメなのでテーマを決めようとしたんですね。それがロックンロールリバイバル・リバイバルというもので(笑)、ほら、流行って10年や15年周期で繰り返すじゃないですか。15年前にはロックンロールリバイバルのブームがあったので、それがまた流行ってくれたらイイな!と願ってこのテーマになりました。だから、酒・タバコ・女、みたいな、いかにもロックンロール的なタイトルになりましたね。AFOCではやらないことをやれたので楽しかったし、収穫も大きかったと思います。AFOCの次の成長過程のためにサテツがあるとも言える。ひょっとしたら洋楽のファンの方にハマるかもしれないですね」
・他のメンバーは何と?
「あ、どうなんだろう?聴いたのかなぁ」
マネージャー「送ってあります。某ヒサヨは「ええで!」と言ってました」
(爆笑)
・でも今回のアルバムも、このアルバムもまた、って感じなんですけど血がたぎるアルバムだし、テンポ(BPM)がどの曲もすごい速いし。
「今までで一番速いかもしれないです」
・波状攻撃のように曲が攻めてくるし、だから6曲目の『ベイビーそれじゃまた』がとても新鮮に聴こえて。
「あぁ、それは嬉しい。できた時からすごく気に入っているんですよ」
・MVを作るリード曲の選定、って話になって、結果『Center Of The Earth』と『ハイテンションソング』になったわけですが、僕自身もMVイコール派手な曲、ってイメージがあって、だから個人的には『光の歌』がいいなと思っていたんですが、そういう常識概念をぶっ飛ばしたら『スノードームの夜』がこの中では一番好きなんですよね。
「あぁ、それは嬉しい!僕もこの曲でMVを作りたかったくらい大事な曲なんです」
・でもそういう意味ではこのアルバムは、4人になったからこその新しさがあるし、かといって昔からのファンも納得するAFOCらしさも随所にあるし、さすがほぼ年に1枚アルバムをリリースし続けたバンドならではの風格すらあって。次作はいよいよ10枚目ですね。
「僕は今、バンド内でのコミュニケーションの仕方とか、サテツのようなチャレンジとか、次に向かっての種まきをいろいろとしているんですよね。それがどう育ってどんな花が咲くかが次のアルバムだな、って思っていて。だから気分は今とてもグリーンなんですよね。フレッシュなんですよ。だからジャケットもグリーンにしました。
前回のアルバムが『a flood of circle』とバンド名を付けて初めて4人の顔を出して、そしてコレ、次のアルバムで、三部作にしたいなというイメージを持っているんですよ。テツが入って4人の序章、というような。ドキュメンタリーを見ているような感じに受け取ってもらえたらいいんですけどね〜。古くから聴いていてくれる人には経過報告を一緒に楽しんでもらえたら嬉しいし、これまで聴いたことがなかった人は今入って来やすいと思うんですよね、新しい物語が進行中だから」
・春からライブ三昧ですね。まずは3月からの『A FLOOD OF CIRCUS 大巡業 2019』を全10公演、4月には『A FLOOD OF CIRCUS 2019』を渋谷で。5/30〜6/1には『BRADIO 47都道府県ツアー IVVII Funky Tour』の北海道公演のゲストで道内3公演を、そして6月からは全国ワンマンツアー『a flood of circle Tour CENTER OF THE EARTH〜アーユーハイテンション?』に突入すると。他にもフェスやらイベントやらでびっくりするくらいのライブスケジュールですね。
「すごく楽しみにしてるんです。『A FLOOD OF CIRCUS 大巡業 2019』は主に若手とバンドとの対バンなんで、テツもたくさん刺激を受けるだろうし、それは僕らも同じだし」
・昔、新星堂から『SELDOM 2』というコンピレーションアルバムが出ていて、そこにはAFOCも入っていますが、これから対バンする『BRADIO』や『夜の本気ダンス』も入っていて、他にもたくさんのバンドが入っているけれど残念ながら解散しちゃったバンドも多くて、その意味でこの3バンドは今も元気に活動を続けている、なんか同期なバンド達、って感じですね。
「あー!あった『SELDOM 2』!!懐かしいなぁ。そこまで調べてくれた人は初めてです。視点が新しい(笑)。お互い生き抜いてきましたね。「昔同じコンピアルバムに入ってました」って話しておきます。酒の肴に良い話題だなぁ(笑)。実は彼らとはそんなに面識はまだないんですけど、ずっと泥臭くやってきたバンド達だと思うし。話が合うような気がしています」
・では最後に、北海道のR&Rラヴァーの皆さんに。
「現在進化中のAFOCなので、ドキドキワクワクしながら僕らも演っているので、北海道の方には5月の末にBRADIOのツアーで見てもらって、その一ヶ月後たぶん僕らは更に先に進んでいると思うので、変化していると思うので、ワンマンも観に来てもらえると嬉しいですね」
インタビュー・文 大槻正志(ペニーレーン24)